二.南無三。
「勘違いされても――困るんですが」 本当に困ったような表情で、蜜蜂が言う。 「僕達は暗殺専門です。助けてくれなんて言われても、割と困ります」 「頼むって! 金なら払うから……!」 「でも……ていうか、貴方一人でも大丈夫なんじゃないですか?」 「人数が欲しいんだよ!」 焦るのも頷ける。 時間内に薬を投与しなければ――彼女の身体はどうなるかわからない。 蜜蜂は二人の先輩を見た。その内の一人――真庭蟷螂が発言する。 「幾ら出せる?」 その、七花の頼みいれを了承するような言葉に、訝しげな顔をする蜜蜂。 「蟷螂さん……?」 「特に任務もない――それに、ここでこの話を蹴ると、客を減らすことになりそうではある」 そこまで言って七花の方を見た。七花は大きく頷く。 「幾らでもいいよ。金なんて持ってても使わねえし」 「……蝶々さんは?」 話を振られた蝶々は、まだ考えるポーズをとったままだった。 「? ……蝶々さん?」 「や……なんか重要なこと、忘れてる気がして」 「んゃじいいに別」 逆様な声が聞こえる。 「白鷺」 「でとこーつっスビーサ用様意得おは回今、しーせるうが士策奇」 「ぬしもやるのか?」 「やい。よだんあが用がい悪。だけだだん挟嘴らかたえこ聞が話な妙、らたっ戻にりとんもれ忘」 そこで。 突然、蝶々が立ち上がった。 「ちょ、蝶々さん……?」 無表情のまま、蝶々は机の上に乗っていた白い電話を取ると、短縮ダイヤルを押す。 途端、鑢七花から――明るいポップスが流れた。 「え? え――」 混乱する七花に詰め寄ると、上着の内ポケットに手をつっこみ、音を発する何かを取り出す。 蜜蜂は、その何かに見覚えがあった。 「それ、鴛鴦さんの――」 「虚刀流、この携帯どうした?」 「え、あ――ねえちゃんの、病室に」 そこで露骨に舌打をする蝶々。 「悪い蜜蜂――暗殺専門とか何とか、言ってらんなくなった」 「……みたい、ですね」 「詳細を話せ――鑢七花」 「あ「……それは私が話そう」 そんな女の声が聞こえた。 |