十.新登場。
『鑢七実さん! 聞こえてますか!』



全館放送、大音量。
真庭蜜蜂の声が響き渡る。






『蜜蜂です……! 聞こえてたら方法は問いませんから騒ぎを起こしてください! 薬持ってきてますから!』






たぶんその場合大虐殺になるんだろうけれど。
やむを得ない。時間は最早ぎりぎりすぎるところまで来ている。













その――自分を呼ぶ声で。









鑢七実は、目を覚ました。










「……あら」







体の痛みはそのままだが、妙に辺りが心地よい。







「なんなんですかねー? この放送」
「さあ。誰かがふざけてるんじゃないのかい」






ベッドに寝かされているのだと、気がつくのにさほど時間はかからなくて、










「あー! おねーさん起きました!」
「おう? 良かったじゃないか」










状況を認識するするのには大分掛かった。











* * *

















「鑢七実はまだ見つかってないそうだぜ――相手の拘束からは逃れたらしいけどな」







居心地悪そうに普通の言葉を喋る白鷺。









「……にしても、何故貴様が……」
「虫組は――というか、鳳凰以外の忍軍は」







そこで白鷺ははっきりと、奇策士の方を指差した。








「あんたらのケー番、知らねえ」





「「あ」」








早く気付けよ。
任務前に気付けよ。
五人もいて誰も気付かなかったのかよ。






微妙な空気が流れた。










「鴛鴦の方はもう見つかったみたいだけどな」
「……そっちの方を優先したのではないか?」
「ばーか。同じ空間につかまってる人間探すのにどっち優先もねえよ。問題はあんたの姉の方向音痴だ」
「………………」







思い当たる節のある七花は沈黙した。
それに気がついたとがめも沈黙した。








「で、鑢七花」
「……なんだよ」
「そろそろ外に出て、直ぐに入れる準備しとくこと。以上」













今度こそ、はっきりと七花は立ち上がる。











「たれかつーあ」











いつもの逆さ喋りに戻った白鷺は、そんな風にのんびりと言った。