「スウェーデン君とフィンランド君は、参加してくれないんだって」


振り向かずに言った言葉に、返事はない。


「まあいいけど――これが終わったら、無理にでもすればいいし」

それよりリトアニア君が先かな、とごちてみる。


「でも難しいよね。向こうには沢山の――人間も人間以外もいるけど、僕には君しかいないもんね」

ねえスイス君、という呼びかけに「妙な言い方をするな」と返事がある。


「我輩は武人だ。傭兵だ。金で雇われているだけである」
「そう何だよね。向こうは信頼だの何だので繋がってるのに、僕はお金で雇ってるだけ、だし」
「状況は悪いな」
「だからいいんじゃないか」


明らかに状況の悪い相手から、蹂躙されるのは。

「屈辱でしょ?」
「趣味が悪いのである」
「そうかもね。趣味が良かったら、そもそもこんな事しない」



でもね、スイス君――と自分は続けかけて、やめた。

本当は一人が嫌だっただけな事。
皆と一緒に過ごしたかっただけな事。

そんな事は言ってもスイスは信じないだろうし、そもそも武人の彼は興味がないだろうし、それに昔の事なのだ。
今更な話なのだ。




幾度目か――自分を生み出した、神を呪った。

そしてそっと、瞼に触れてみる。
眼球を抉る想像をする。
瞳は、もう随分と――涙を流していない。
眼球を抉れば自分は泣くだろうか。
眼球が無ければ涙は流れないのか。

そんな妄想を、する。



「奇跡の子――」



それを奇跡と呼ぶのだそうだ。
一生は本人の資質ではなく、周りの環境に左右される。
運命の大海を前に、人間の努力など無に等しい。

それでも自分は――努力をする。
だからこそ、頑張り続ける。


幸せを壊す為に。
幸せを得る為に。


「中国君は幾ら行っても会わせてくれないんだよね」
「我輩が兄でもお前に弟は会わせないある」
「酷いなあ」


くすんだ色の写真を手元に。
眩い笑顔の中心で、一人だけ笑わない男がいる。

毅然と構える物腰は不愉快で。
その強さは、ねじ伏せたいもの。



「日本君、かあ」



友達になってくれるかな、とそれは多分、本音だった。

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