「リト、見て。まじウケるしー」
「え、何? それ――ギリシャさんから手紙?」
「うん。俺の人形作るらしーよ」

ぱたりぱたり。寝台の上で手足をばたつかせるポーランドの傍により、その手にある手紙を覗き込んだ。
そこには見慣れたギリシャの字で、ご神体を作る旨が記されている。

「ご神体? 何でまたそんな……」
「手紙出すのが面倒らしいしー」
「確かにセーシェルさんも大変そうだけど……ご神体作ればどうにかなるもんなの?」
「しらんしー。電話線でもひくんやないと?」
「引けないでしょ……」

まあ、ギリシャにも何やら考えがあるのだろう、考え違いじゃなければいいなと切に願いながら、リトアニアは苦笑する。


「俺の写真って何処やったっけ?」
「ポーランド、宝物関係は全部ベッドの上に並べてるでしょ」
「そんなん知ってたし」
「じゃあ聞くなよ……」

這うように移動して、広い寝台の片隅においてあったアルバムを開くポーランド。


「どれにしよっかなー。俺どれも格好いいしー」
「はいはい」

セーシェルさんまだその辺にいるかなあと思いながら、リトアニアは耳を澄ませた。



――たったったっという小気味の良い音が聞こえる。

「あ、良かった。まだ遠くに行ってない」


指を口にあて、笛の要領で吹き鳴らす。
広がらず、真直ぐにだけ伸びる音――人間の肉体構造ではとてもでにが出せない物だが。
残念ながらというべきか、幸いながらというべきか、リトアニアは、人間ではないのだった。


「んー」
「どうしたのさ、ポーランド」
「これが俺格好いいと思うし」
「ならそれにすればいいだろ」
「ただ、嫌な奴が一緒に映っとるんよ」
「嫌な奴――って」


ロシアさん? と聞くと、答えの代わりに写真が差し出された。

予想通りの人物が、そこににこやかに座っている。
偶然写ってしまったのだけ、という風情の物なのだが、それでも不満な様だった。

「俺あいつ嫌いやしー」
「神様がえり好みしちゃ駄目だろ」
「どうせ嫌いでも、生まれてる以上何も出来んからいいんやん」


そう、ポーランドの担当は、生なのである。
彼は、あらゆる意味で人の死には関われない。
人を生み出し、その出生を少々弄る事が出来るというだけなのだ。



「でもまあ――それにしなよ、ポーランド。今セーシェルさんに戻ってもらってるからさ」

そのポーランド格好いいよ、と伝えると、ならいいしーと気紛れな神様はあっさりそう言った。

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