「……でかいぞちくしょーが……」 大きな屋敷――というより、高い塀。 侵入する気は毛頭ない、ただ眺めるだけだ。 その中には、とりあえず知っている奴がいる。 塀の周りでも回ってみるかと何となく思う。 ばしり、と後ろから頭を叩かれた。 「……誰だよ!」 「やっぱスペインとこのガキじゃねえか」 「ガキじゃねえぞ! 俺は」 「ロリータだっけか」 「ロマーノだ!」 悪人面で笑っている男は、確かスペインの悪友だか何だか言う男だった。 「プロセインか!」 「プロイセンだ! 地味な間違い方してんじゃねえよ!」 プロイセンは何か大きな箱を持ったまま、偉そうに威張った。 「……それ、何だよ」 「これか? ヤクだよヤク」 「阿片か?」 「そのヤクじゃねえよ! 薬だ薬」 「毒薬?」 「お前俺の事何だと思ってやがんだ。普通の薬だ馬鹿」 ヴェストの奴に売りつけに来たんだよ――とプロイセンはやはり威張っていった。 何を威張っているのかわからない。 「お前、中に用があんのか? ならこの俺が入れてやってもいいが――」 「用なんてねえよ。バーカ」 「あ、てめえこのクソガキ!」 「……何やってるんだお前達」 「げ」「ヴェストか」 何時の間にか、本当に来た気配もなく、そこにドイツが立っていた。 いい争いをしていたから気がつかなかっただけかもしれないが。 「人の家の前で騒ぐな」 「塀の前だからいいじゃねーか。っと。ほらよ、薬」 「ん。ああ、ありがとう――ロマーノ」 呼び止められてしまう。 逃げようと……いやいや立ち去ろうとしていたのに。 「イタリアは元気だぞ。最近調子もいい」 むかつく奴だ。 足を止めない。 「会っていかないのか」 「……会うわけねーだろ、ちくしょーが」 「何故――」 そこで門を曲がった。姿が見えなくなる。 「まあ仕方ないんじゃねえの――死神、って話らしいしな」 どくん。 「死神? そんな訳ないだろう。そんな事がある訳が」 「ばーか。そう言う意味じゃねえよ」 嗚呼。 皆皆、死んでしまうのだ、自分の前で。 |