ハロウィン2





悪戯? お菓子? そんなの要らない



本当の本当に欲しいのは・・・





10月31日、ハロウィン当日

人鳥は喰鮫に着替えを手伝ってもらっていた

やたらとややこしい作りの仮装の衣装は全て鴛鴦と狂犬の手作りで、一人で着ることも出来ない

「す、すみません…」

「気にする必要はありませんよ ほら、とっても可愛くできました」

黒い服には小さな悪魔の羽根が、丈の短いズボンには尻尾が付いていて

ただでさえ子供のように見える自分が更に幼く見えて、鏡の前でこっそり溜め息をついた

嬉しそうに自分を撫でている喰鮫さまは、なぜか仮装をしていない

聞けば「もう子供ではありませんからね」

そう、笑いながら言って リビングを覗きに行ったけれど

まだみたいですから、お茶でも飲みましょう と、盆にティーポットとカップを持って戻ってきた



お茶菓子は、どこかのケーキ屋で買ってきて置いてあったらしいスイートポテト

甘すぎるそれに合わせたのは、無糖のミルクティー 喰鮫さまは無糖のストレートだった

「まだ準備できないんでしょうか…?」

「…たぶん、パーティーは明日になるでしょうね」

「ど、どうしてですか?」

聞くと、喰鮫さまは少し躊躇うように視線を彷徨わせてから

「皆、明日まで出てこないからですよ」

「…?」

「蝶々と鴛鴦は、今日は出張で居ません」

「はい」

「白鷺と蝙蝠は鬼ごっこをしていた」

「はい」

「さっき覗いたら、蜜蜂と蟷螂が一緒に蜜蜂の部屋に行っていましたよ」

「…なるほど」

それでは確かに、パーティーが確実に明日になる事が予想された

「せっかく着付けたんですけどねぇ… 可愛いのに」

「喰鮫さま… そっちですか……」

どこか論点がずれていると思わなくも無いが、本当に残念そうなので少し言うだけに留めておく





それから、お茶も終えてしまい 何もすることがなくなってしまった

本を読んでいる喰鮫さまは暇ではなさそうだけれど、自分はそんな日本が好きなわけでもなくて

ぼくはひたすらぼぅっとしているしかなく 暇で暇で仕方なかった

それもこれも全て、やたらといちゃついている他の人達のせいだと思うと苛苛した

「……ぁ」

「どうしました?」

「な、なんでもないです」

イイコトを思いついた

他の人達がいちゃついているのなら、自分達もいちゃつけばいいだけなのだ

そういっても、一筋縄じゃいかないのだろうけれど

どうすれば一番効率がよいか、考えるのにかかった時間は三分ほどだった

「喰鮫さま」

「どうしました?」

疑う事を知らないかのような瞳はとても優しい

そこに付け込むことに、少しだけ良心が痛まなくもないけれど

「Trick or trick?」

「え?」

「Trick or trick? です」

微笑みながら言うと、固まったまま動けない喰鮫さま

「お菓子なら、さっき食べましたよね… 食べましたよね 食べましたよね」

「だから、Trickです」

お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ、なんて言わない 

それに、今のぼくは 喰鮫さま曰く“可愛らしい”悪魔ですし

「……二択ですか」

「二択です」

なんて、待ってるつもりなんて無い

少しだけ怯えているような喰鮫さまの髪の毛を引っ張って、その口唇に自分のそれを押し付けた

一分くらいそのままの状態だったが、苦しそうだったので一度離してぼくは

「いただきます」と、笑った





悪戯? お菓子? そんなの要らない



本当に欲しいのは・・・ 彼の気持ちだけだから







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霜月夢さま宅から強奪してまいりましたハロウィンフリーですv(二回目)
夢様の喰鮫受けがどうしようもなく好き。
人鳥君が何故か黒いのに可愛いんだよな……恐ろしい子!(また元ネタが古いのを)

ありがとうございました! でももう一つありますv


ハロウィン3