不協和音は留まらない と微妙に続いてる感じの裏ですご注意を。









時間の感覚が、とうに狂って仕舞っている。
不協和音のような雑音が、耳に入って――留まることなく、消えていく。
何もかもが消えていく感覚がする。
自分と言うものが無くなって、ただ痛みだけが残るかのように。





「まだ、耐えるか」





雑音。
不愉快な、声。





「『不折』――当然、だ」
「当然。そうか」






視界は遮断されている――何も見えない。
見えないが――しかし。
文字通り、そこに張り付いているだろう男の表情は、容易に想像できた。





それもまた、当然。






「ぁ……っ……!」






耳に熱い感触があった。
否――これは痛いのか。
どうでもいい――ただ、耐えるだけ。






こんなもの――否定してみせる。







「っ」






熱を帯びた身体に、覆いかぶさるような衝撃はよく響いた。
拘束されたまま解けない両腕の上に仰向けになる。
掴まれている肩は、爪が食い込んでいるのがはっきりと分かるほど――痛い。






「な――」
「何をする、などと言うなよ」








台詞を横取りし、更に肩に篭る力が入る。
どくどくと血管の音がして、僅かに血が零れたのが分かった。






「……っ!」
「どうした?」








胸から腹にかけて――鋭く、長い痛みが走る。
刀にしては酷く切り口が歪だ――何を。








「貴様っ爪で」
「何か悪いのか? 我の仲間には、爪で人の首を刈る男も居たぞ」
「っぐ……!」







傷口を甚振るように体重をかけて、次の衝撃は首筋。
肉ごと食い千切られてしまいそう、な――実際、この男ならば食いちぎっても何等不思議はない。







血の音がする。







「やっ……っ!」
「は――肉を食まれるのは構わぬのにか」






馬鹿にするような口調で言う男――しばし、音が止む。
求めた沈黙と静寂は、長くは続かなかった。






「ぁ……くっ」







下半身に感じた――最早異物感などと表現するのもおこがましい不快感。
そう、脳で感じるのは間違いなく不愉快だと言うのに。
声を抑えるのに、苦労が居る。






「……歯を食い縛るのが好きだな、おぬしは」
「……っ!」







口の中に錆の味が広がる――自らの歯で、何処かを傷つけたのか。
その時、はらりと視界を覆っていた布が取れ――ようやく、辺りが見えた。
勢いで男を睨みつける――その、顔面を睨みつける。









「ぅ……っあ」












身体が揺れて、不愉快な衝撃があって。
男の無表情な顔を見た瞬間、全てが消えていってしまった。










止る閑かの響き方
(沈黙すら音なのだと、その時知った)