彼が一番嬉しそうに笑ってくれる贈り物を、あげられればいいけれど
「サンタというのは、ミュラの聖ニコラウスからきていて、オランダ語シント・クラウスが訛ってサンタ・クロースといわれるようになったという話があるのだが」
「それがどうしたっちゃか」
「・・・ひまなんだよ、アス」
「起きてからずっとその調子だからな。目に見えてわかるっちゃ」
リボンと包装紙の海に寝転んだ双識を見下ろしながら、軋識は溜息を吐く。
「そのプレゼントの山はどうしたっちゃか?」
「んー?友達から貰った」
「そうかそうか。宝石とか薔薇の花束とか洋服とかばっかりだから、てっきりお前の恋人からだと思ったっちゃ」
「うふふ、アスはやきもち焼きだなあ」
「だまれ」
「でもさ・・・二十歳過ぎた男にクリスマスプレゼントって組み合わせ、なかなかないんじゃないかな?」
「まあな」
「すっごいよね。首飾りとか私におくって、どうするんだ。どうしてほしいんだ」
「・・・」
「で、この場に運悪く居合わせてくれちゃったアスは、何かくれるの?」
無邪気な瞳で問う双識。
本日二度目の溜息をこぼしてから、軋識が口を開いた。
「今日一日、ずっとお前と一緒に居る」
「―――――――・・・・・・それは、」
「これくらいしか思いつかなかったっちゃ」
「それは、とっても素敵な贈り物だね」
床に散乱していた赤い薔薇と指輪を踏んで、双識は子供のように笑った。
(こうゆう日なら、極々自然に彼を独り占めできる。
ああ、昔の人はなんて都合の良い日を作ってくれたんだろう!)