24日の深夜。人鳥の部屋の前に人鳥を除く十二頭領全員が集合している。 頭領のリーダーである鳳凰がしのび同士にしか聞こえないほどの小声で言った。 「皆、準備はいいか?」 「ばっちりだぜ」 全員を代表して蝙蝠が答えた。 「サンタクロースの衣装も用意したし、プレゼントも用意できたし、ラッピングも完璧だぜ」 「わたくしがプレゼントを用意いたしました。蝶々と二人で」 「かっかっかっ。人鳥が何を欲しいかは川獺どのが事前に調査してくれたからな。簡単だったぜ」 「なんで人鳥君がこんな物を欲しいのかはわからなかったんだけどね」 「衣装はあたしと蜜蜂がつくったのよ。苦労したんだから」 「生地の調達やお手伝いは僕がしましたけど、ほとんど狂犬さんがつくってくださいましたよ」 目の前に出されたのはサンタクロースの衣装。 めがねや付け髭つきの完璧な変装セットである。 「なーねえ見にり作手」 「ラッピングはおれがしたぜ。ほら、完璧だろ!」 蝙蝠が豪華にラッピングされたプレゼントを皆の前に差し出す。 皆が感嘆の声を出す。 「相変わらずぬしは器用だな」 「お前が包装紙とかリボンとか集めてくれたからな」 「包装紙とか捨てるのがもったいないからな。いつもとってあるんだ」 「蟷螂、貧乏くせーな・・・」 「普通だろう」 「そういや喰鮫と海亀と白鷺は何したんだよ?」 「わしらか?」 「たいといごしに間昼に様いなき起が鳥人」 「修行を見てやるといってな。かなり運動させておいたから今は熟睡しとるはずじゃ」 「楽しかったですね。楽しかったで(略)」 笑う喰鮫を見て、誰もどんな修行をさせたのかを聞く者はいなかった。 「・・・じゃ、鳳凰頼んだぞ」 「わかっている海亀どの」 鳳凰はいつの間にか狂犬と蜜蜂が作ったサンタクロースの衣装に着替え、プレゼントを手に持つ。 付け髭もめがねもばっちりつけていて、なかなか滑稽な姿だったのだが、笑う者は誰もいない。 静かに鳳凰を見守っている。 鳳凰はそっと音もたてずに人鳥の部屋に入り、人鳥の枕元にプレゼントを置いていった。 「おれ思ったんだけど、これってサンタの衣装を着る意味ないんじゃないか?」 「気持ちの問題よ蝶々。煙突があったらそこから入るくらいの意気込みじゃないとだめよん」 「じゃ、ソリとトナカイもないとだめじゃねーか? 狂犬どの」 「それを忘れてたわね。猪と山犬くらいしかこの付近にはいないけどそれでいいわよね?」 「よくない、よくない」 寝ている人鳥をみて川獺はしみじみつぶやいた。 「やっぱ子供なんだよな、人鳥君。サンタクロースを信じているなんてさ」 「可愛くていいじゃないですか。いいじゃないですか。いいじゃないですか。いいじゃないですか」 「悪いなんて言ってねーだろ。おれも昔は信じてたから懐かしいって思っただけだよ」 「そうですね。わたしも二十歳までは信じていました」 「嘘つけ!!!」 翌朝。 人鳥が昨夜もらったプレゼントを持ってちょうどその場に居た鳳凰、海亀、狂犬の前に現れた。 「こ、これを里のみんなで食べましょう!」 昨夜のプレゼントの中身はクリスマスケーキだった。 綺麗にデコレーションされた大きなケーキはとてもおいしそうである。 「これは人鳥がサンタにもらったものじゃろう? わしらに与えていいのか?」 「は、はい」 人鳥は照れながら答える。 「ぼ、僕サンタさんにお願いしたんです。み、みんなで食べれるケーキが欲しいって・・・だ、だから、だから、みんなで食べま」 人鳥は最後まで台詞を言えなかった。 狂犬が思いっきり人鳥を抱きしめ、海亀はぐしゃぐしゃと人鳥の頭をなでたからだ。 鳳凰は涙ぐんでいる。 「も〜〜〜人鳥っ! あんたって子は! 本当にいい子なんだから!!」 「そうじゃのう。では皆で食べようかの」 「それがいい。我は里中に緊急収集号令をかけてくるとしよう」 「ふ、普通に皆さんを集めてくださいっ!」 その日みんなで食べたサンタクロースからのプレゼントケーキは、たいそう美味かったそうだ。 ハッピーメリークリスマス! ―――――――――――――――――――――――― グリフ様宅から強奪してまいりました、クリスマスフリーですv サンタの衣装着ちゃってる鳳凰さんを想像してにやけました(←) 人鳥君いい子……! 白人鳥君は癒されるのです。 ありがとうございました! |