最近双識が、小鳥を飼い始めた。
羽の色が鮮やかな、小鳥。
白い鳥籠に入っている。
「なあ、毎日毎日おんなじことの繰り返しで、厭きないっちゃか?」
「ん?全然。だって可愛いじゃないか」
ああそうかよ。
てきとうに言って、双識の傍による。
どうも自分は鳥と意思疎通は一生できそうにないが、双識は違うようだった。
人差し指に小鳥をとまらせて、楽しそうにこちらを見てくる。
「アスと違って、逃げないからね」
ぐん、と。
襟首をつかまれて、引かれた。
「ほら、可愛いでしょう?」
鼻先三センチメートルの位置に、鳥。
近すぎてよく見えない。と、いうか、こんなふうに扱われても微動だにしないこの鳥は、凄いと思う。
「俺は、嫌いっちゃよ」
「どうしてだい?こんなにお利口さんなのに?」
鳥の小さなくちばしに、唇を寄せる。
馬鹿みたいだと思った。
だって鳥だぞ?鳥に、鳥に、鳥なんかに。
心底腹がたつ。
思い切り抱き締めて、口付ける。
流石に驚いたらしく、ばたばたと音を立てて鳥は飛ぶ。
「・・・・・・・・・ん、あ、逃げちゃった」
「そうっちゃよ、逃げたっちゃ」
「ちぇっ」
「今お前の目の前にあるのは、なんだ?」
「アスだよ」
「なら俺の事だけ考えてればいいっちゃ」
指に、髪に、頬に、瞼に。
指を滑らせる。
「鳥類に嫉妬するのはどうかと思うなあ」
「うるさいっちゃ」
「うふふ」
そのまま床に押し倒す。
ばらばら広がる長い髪が、いつもいつも理性を奪って。
通う血まで白いんじゃないかというくらい透きとおった肌が、やさしくやさしく誘う。
「アスには綺麗な翼、ないけれど」
「ん」
「アスは、きれいな鳴き声出さないけれど」
「ん」
「アスは籠の中におさまってくれないけれど」
「・・・ん」
「安心してくれよ。何より誰より君を愛してる」
絡めた指が、手の甲に食い込んだ。
男のくせに細い脚が、脇腹をくすぐる。
開けっ放しの窓から、小鳥が逃げた。
残された籠だけ、風に揺られてぎぃぎぃと音を立てて。
ネクタイを解いてやりながら、ふと思う。
そうだ。いまは俺が逃げ回っているけれど。
そのうち、双識のほうが逃げてしまうんじゃないか、と。
だって、
籠に詰め込んでしまいたいほど、お前がいとしい。
窓の外には、真っ青な空。
彼が逃げてしまわないように、
体も心も、心臓の音も、いまのうちに全部繋いでしまおう。
「あいしてる」
(できることなら、閉じ込めておきたいくらいに)
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解河鼎さまから頂きました、相互お礼ですv
もう大好きすぎて軽くやばいレベルかもしれません。
鳥類に嫉妬する軋識さんが愛しいのと、ちゃんと軋識さん愛しちゃってる双識さんが素敵過ぎます。
ありがとうございました!