「アスー?」


双識の声が聞こえる。どうやら起こしに来たらしい。
朝だった。仕事だった。日常の、始まりだった。


この世界では、生活するためには働かなければならない。
だから自分は働いているのだ。そんな事は諒解している。
働かなくていいといわれたら、たぶん従うだろう。
仕事は自分の生きがいにはなりえない。



「朝だよ」
「わぁ……ってる」




眠い――というよりも、だるい。
熱があるわけでもないのだろうが、なんだか怠惰な感じだった。




「……具合でも悪いの、」





言われる前に腕を掴んで引き寄せる。
バランスを崩した双識は、あっさりと自分の腕の中に入った。





「……遅れるよ」
「知ってる」
「いいのかい」
「いい」




じゃ、いいのか。そんな風な呆れたような声が聞こえる。
なんだかどうでも良くなってしまったのだ、そのときに。










きみがいるだけで生きていけるわけもなく
(でもさ、君がいないと生きていけない)