「三分間」



そう言って少女は男の目の前に、青い砂の入った砂時計を晒した。




「お別れをしよう?」




そして、反対を向けて床に置く。



「最後に何かいいたいこと、ある? それとも何かしたいこと、ある?」
「…………暴、君」



男は泣いているのか笑っているのかよくわからない表情で、少女に向かって語りかけた。


「触っても……いいですか」
「いいよ。最後だもん」


ひざまずくように少女に視線を合わせた男は、その劣性の証たる青い髪を優しく触った。
それから少し戸惑うようにして、少女の小さな肢体を抱いた。



「言いたい事はないの?」
「ありすぎていえませんから――言いません」
「そっか。賢明だね」



しばらく経ってから少女は、その小さな手を男の背中に伸ばす。
男は再び戸惑ってから、それでも少女のなすがままにしている。
最後の砂が――滑り落ちる瞬間に。
少女は、男の額に軽く口付けた。




「じゃあ、ばいばいだね」
「はい」




足元の、完全に砂の落ちきった砂時計を拾って少女に渡す男。
少女はゆっくりと、それを拒絶する。



「ぐっちゃんが持っててよ」
「……え?」
「それ、あげる」



男は再び、笑っているのか泣いているのかわからない表情になって――




「ありがとうございます」



その部屋を、出て行った。










その砂時計が永遠を刻むことはなかった
(でもその3分間は刹那の様でも、永遠の様でもあった)