「双識さんなんか、嫌いです」



彼は悲しそうな顔をした。
こっちまで辛くなる、そんな顔で。




「私は、舞織ちゃんが好きだよ」





止めて、ほしい。
そんな優しさは――欲しくない。
家族としての好きなんて、いらなかった。





「私の好きと双識さんの好きは――違う、から」






全部、全部、全部、全部好き。
骨の髄まで愛せる自信があった――彼の死すら、悪ですら、愛せる自信があった。
自信――違う。








確信という名の、自負。










「違わないよ」





きっと口に出してしまえば、彼はそれを受け入れてしまうのだろう。
零崎双識としてではなく、零崎舞織の兄として――全てを受け入れてしまうのだろう。
兄妹なら、それでいい。
恋人同士なら、まるで駄目だった。





「好きは、好きだよ」





優しさは縋るためにあるんじゃない。
優しさは守るためにある。





「何にも、違わない」






それでもその優しさだけが、自分に与えられた唯一の希望で――




「好き」






ごめんなさい。
謝罪を込めて、貴方に縋る。










その優しさから離れられなくなるまえに
(いつだって理性と感情じゃ、心が勝ってしまうのだ)