「そんな所で寝たら風邪引きますよう」 折角ピクニックに来たと言うのに。 折角いい天気だと言うのに。 折角二人きりだと言うのに――は、いつものことだけど。 「別に寝てねーよ」 人識は、柔らかそうな草の上に寝転んでいるだけだ。 目を瞑っていたから、てっきり眠っているのかと思ったのだけれど――違ったらしい。 「むー。人識君みたいな人をいけずって言うんですね」 「お前関西の出身なのかよ」 「むー」 仕方がないので、寝転んでいる人識の隣に座る。 体操座りで、膝の上に顎をのせた。 「可愛い妹と二人っきりで、何かやらしい気分にはならないんですか?」 「こんな健全な空の下でやらしい気分になるかよ。つーか二人きりはいつものことだろうが」 何気ない調子で呟く。 「他に誰もいねーんだから」 「…………それはそうですけどー」 今、零崎は二人しかいないのだから。 「あーあ」 そう言って人識は、空に向かって手を伸ばした。 それは何かを欲しがるような、幼子を訪仏させる仕草だった。 「……傑作」 「人の口癖ぱくんってんじゃねーよ」 「むー」 空の彼方に愛を求めたのかもしれない |