少年と青年。
表現するならそうなのだろう。




満面笑みの美少年に、麦藁帽子を被った青年。
随分ちぐはぐな組み合わせだった。




「奇遇ですね、おじさん」
「とりあえず無視して欲しかったんだがな」
「そうもいきません。そううまくも、いきません」
「知ってる」



そこで青年は、心の其処から面倒そうな顔で少年を見つめると、頭をかいた。




「確かにお前は石凪だし、俺がお前ぐらいだった頃を思い出せばお前の方が余程凄えとは思う」
「褒めたって何も出ませんよ?」
「お前から貰って何か嬉しいもんでもあるのかクソ餓鬼」





少年は答えなかった。




「ただ唯一で絶対的な違いは、俺は大人でお前は子供だ。大人ぶろうと何をしようと、どうしようもなく子供だ」
「そんな知りたくもないこと言わないでくださいよ。おじさん、意地が悪いですよ……というか、何が言いたいんです?」





しらばっくれるような少年の口調に、額に手を当てて、青年は言う。







「ガキがくだらねえ気の使い方してんじゃねえよ」






少年の表情は変わらない。
ただ、空気が少し変わった。






「子供が必死になって隠してるのに、大人はわかっちゃうんだからずるいですよ」
「一応、それが大人の役割だからな」
「僕に大人ぶろうとする人なんて、おじさんが初めてです」
「お前は生意気だからな」
「じゃあ、生意気なお願いを一つ」





少年は青年の服の端を掴むと、幾許か悲しそうに笑った。





「しゃがんで、ください」
「ん?」





怪訝そうに首を傾げて、それでも青年は腰を屈める。
随分あった身長差が、縮まった。






「ありがとうござい、ます」






そう言うと少年は、青年の首に腕を絡ませ、抱きついた。
青年は何かを悟ったように、そのまま少年を抱き上げる。





「やめてください……まるで、子供みたいじゃないですか」
「だから、お前はガキだっつってんだろ」





ぽつぽつと、薄い衣服に水滴がしみこんだ。
少年は余りにも普通に会話をするものだから、それが涙だと気がつくのが少し遅れる。





「ふふ」





まるで幼い子供をあやすように、青年は少年の背中を――ゆっくりと撫でた。





「ありがとう」






少年はもう一度呟くと、その小さな唇で青年の頬に触れさせる。
今日ばかりはそれに対する抗議もなく、青年は少年を抱きしめ続けた。










背伸びも無意味だったんだろう
(貴方に近づいてもらわないと、何も出来ない)