「出夢くん……?」



ぼくが相変わらず入院している病院の、窓から突然現れた(ちなみにここは一階じゃない。おいおい)出夢くん。


しかし彼は窓の外に足を出して、ぼくの方など見向きもしない。
一体何をしに来たのだろう。





「出夢くん」
「うっさいなー。ちょっと黙ってろよ、おにーさん」





何かを待っているようにも見える横顔だった。
その顔が、段々と赤く染まる事に気がつく。


別に出夢君が頬を染めているわけではなくて、既に太陽が落ちかけているのだ。





「黄昏時、だね」
「あ、もうそうなのか」






なんとなく呟くと、出夢君はにいと笑って僕の方に向き直った。



そのまま飛び込むような形で、僕の上に乗る。




「え、い、いずむ――」
「今は『誰そ彼』時なんだろ?」
「へ」





ちゅ。
可愛らしい音がして、ぼくの唇と、出夢君の唇が触れた。






「だったら僕が誰なのかわからないよなっおにーさん」
「あ、あの」





出夢くん。









「たぶん君は姫ちゃんより頭が悪い」







殴られた。










窓際で、黄昏を待つ
(照れくさかったからさ)