「はあ? お前西条玉藻知ってんのか」
「むしろぼくはお前にその言葉を返したいよ。出夢君といい、意外に顔が広いんだな」
「俺はお前みたいなひっきーと違うんだよ。アウトドアだから」
「まあ、確かにインドアな殺人鬼は見たことがないけどね」



で、と感情の篭らない声で、少年は言った。


「玉藻ちゃんがどうかしたのか?」
「いや……別にどうもしねえけど」
「あの子はとことん不思議っていうか……うん、でも――」
「何だよ」
「ずるいって、言われた」




ずるい? 反復するように問い返す白髪の少年。




「ああ。それが少しだけ、堪えたかな」
「ふうん」
「情緒不安定が、あそこまで似合う子も希だった」
「だな。ん……情緒、不安定か」
「どうしたんだ零崎?」




「……だったら、別に楽しかったわけじゃねえのか」




呟くようにそう言って、傑作だと笑った。










きみがいてぼくがいる、簡単な奇跡に気付けなかったぼくのせい
(もっともっと、伝えたい事があった気がする)