たぶん何かを壊したくて、何もかもを壊したかったのだと思う。
心の奥底にあったのは、そんな些細で確かな欲求だった。



だから、よくわからなくなる。
俺はこの少女を如何したいのだろう。




壊したいのか。
愛したいのか。




いや、愛してはいるのだ、もう既に。
そして壊せないだろう事も自覚している。
それは即ち――死線を越えることだから。




「死線?」
「…………………」




俺の膝の上に小さく収まっていた少女は、ふと顔をあげると俺と目を合わせた。




「どうされたんですか」
「さっちゃん、何で泣いてるの?」



「え?」




頬に手を当てる。肌以外の違和感。
指を眼前に持って来れば、水滴がそこに存在していた。



「気付いてなかったの? 変なさっちゃん」





ああ、そうか。







「すみません」





俺は泣きたかったんだ、どうしようもなく。










流れ落ちたのは、涙
(笑ってるのにとめどなく流れる 、これを貴方に捧ぐといったら殺されるかな)