汚い。 ふと自分の手に目をやって、そう思う。 とてもとても、汚い。 これを恋しさと呼ぶのなら、恋とはとても穢い物。 これを愛しさと呼ぶのなら、愛とはとても醜い物。 あえて名付けるなら――執着。 忌むべき執着だった。 「まあ、言葉をつけたところで、何も解決しませんけどね――」 恐ろしいことに、自分は微笑んでいる。 当たり前だけれど、歓喜していたのだ。 「ねえ、蟷螂さん?」 四肢の動きは封じている。 苦しそうに頬が上気していた。 時折、耐えかねたように喘ぐ声が聞こえる。 酷く淫猥だった。 それでも揺るがない強い視線に、ぞくりとする。 自らの汚れた指先で、その視線をかき消した。 嗚呼。 心中で漏れる声は彼に届かない。 「僕だけを見て僕だけを聞いて僕だけを感じて――」 世界に二人きりでもまだ足りない。 「僕を貴方の世界そのものにしてほしいって、言ったら蟷螂さんは、どう思いますか?」 汚いと思うだろうか。変だと思うだろうか。愚かしいと――笑うだろうか。 嫌悪して、憎悪してほしいとすら、思った。 そうすれば自分も、彼を嫌えるかもしれない。 そんなことはありえないと、わかっていたけれど。 それに彼はきっと――自分を拒絶はしないだろう。 彼のその優しさこそが、こんなにも自分を執着に走らせる。 「みつ……ば、ち」 「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい――」 謝罪は嘘偽りない本音だった。 だけど。 「それでも、僕の事だけ呼んで――」 嗚呼。 彼の衣に染みる水滴で、ようやく僕は自分が泣いている事を知った。 見えない、 |