とてもとても幸せな光景が、広がっていましたとさ。


さあいらっしゃいな。




8. 走 馬 灯 の 果 て に



(早蕨×少女)





楽しそうに、弓矢さんが笑っている。
兄さんはいつもの仏頂面で、それでもそこにいてくれた。
何よりも――が。
自分の傍について、一緒にいる。






「・・・・・・俗に言う走馬灯って奴ですかねえ」






何故ならその風景は、切り取られたように浮いている。
まるでなじまない、幸せそうな感じ。





身体が痛い。







走馬灯――否。





「これは――妄想の類か」






こんな幸せな風景など、自分は一度も見たことがない。
こんな普通な景色など、自分の思い出にはない。




刃渡は居た。弓矢も居た。も居た。自分も居た。
ただ、爽やかな色味を帯びたことなどない。
もっと血みどろで――もっと、汚かった。





「薙真」
「なんです?」






傍らのが己に話しかける。
自分の妄想なのだと分かりつつも、素直に反応してみた。


最期なのだ。


夢を見るぐらい、許されるだろう。
いや、それともそんな些細なことさえ許されないのか。




「しあわせだね」
「・・・・・・そうですねえ」





前を見れば弓矢は一人先に行って、大きく手を振っていた。
生きている頃は見た事もない弾けるような笑顔。
幸せ、だ。





走馬灯。
ならば、許されるのだろう。





初めての手を握って(彼女は驚いた顔をした)
初めてを抱きしめて(彼女の表情は見えない)
初めてに、口付けた(彼女は幸せそうだった)





「幸せ」
「ええ」





弓矢がいる場所に――刃渡も同じく立ち止まって。





「行くぞ」





仏頂面で、そういった。





「ちょっと待ってくださいよ。兄さんはせっかちですねえ」
「本当にねえ」






そしてのどかな風景は途切れて





その先には、