さあいらっしゃいな。
(早蕨×少女) 楽しそうに、弓矢さんが笑っている。 兄さんはいつもの仏頂面で、それでもそこにいてくれた。 何よりも――が。 自分の傍について、一緒にいる。 「・・・・・・俗に言う走馬灯って奴ですかねえ」 何故ならその風景は、切り取られたように浮いている。 まるでなじまない、幸せそうな感じ。 身体が痛い。 走馬灯――否。 「これは――妄想の類か」 こんな幸せな風景など、自分は一度も見たことがない。 こんな普通な景色など、自分の思い出にはない。 刃渡は居た。弓矢も居た。も居た。自分も居た。 ただ、爽やかな色味を帯びたことなどない。 もっと血みどろで――もっと、汚かった。 「薙真」 「なんです?」 傍らのが己に話しかける。 自分の妄想なのだと分かりつつも、素直に反応してみた。 最期なのだ。 夢を見るぐらい、許されるだろう。 いや、それともそんな些細なことさえ許されないのか。 「しあわせだね」 「・・・・・・そうですねえ」 前を見れば弓矢は一人先に行って、大きく手を振っていた。 生きている頃は見た事もない弾けるような笑顔。 幸せ、だ。 走馬灯。 ならば、許されるのだろう。 初めての手を握って(彼女は驚いた顔をした) 初めてを抱きしめて(彼女の表情は見えない) 初めてに、口付けた(彼女は幸せそうだった) 「幸せ」 「ええ」 弓矢がいる場所に――刃渡も同じく立ち止まって。 「行くぞ」 仏頂面で、そういった。 「ちょっと待ってくださいよ。兄さんはせっかちですねえ」 「本当にねえ」 そしてのどかな風景は途切れて その先には、 |