私は、きっと一生、 (零崎×零崎) 顔は真っ赤だった。 別に照れてたとかそんな可愛い理由ではなく、単純に血に染まって真っ赤だった。 誰の血なのか、わからない。 彼の血だろうか。それとも、誰かの血だろうか。 安らかな死に顔などそこにはなく、苦痛に顔をゆがめたような、それでいて恍惚としたような表情。 そんな死に顔、見慣れてたよ。 「逃げれば、良かったのに」 逃げるのは得意なはずでしょう。 逃げてばかりいたくせに。 彼の死体は随分と惨めな様相だった。 まず喉がつぶされている。腕が切られている。 ああ、私はあのファゴットの音を、あの甘美な韻律をもう二度と聞くことは出来ないのだ。 そう思うと少しだけ哀しくなった。 何故。 何故何故何故。 「わから、ない」 答えてくれない。 お別れも出来ない。 もやもやだけ残った。 鬱陶しい思いが滞留する。 黒い肩まであった髪の毛は、少しばかり短くなっていた。 それは明らかに床屋の所業ではなさそうだったけれど、中々様になっている。 そろそろ行かなければ。家族が待っているのだ。 鬼にしては優しすぎるその家族は、この様子を凝視できず、さっさと何処かへ行ってしまった。 覚えておかなければ。 記憶者は私しかいない。 私がおぼえていなければ、彼の死は覆い隠されてしまう。 私は数歩彼から遠のいて、まるで写真か何かのように、風景ごとその様子を記憶した。 空は鳥が飛んでいた。空は綺麗な蒼だった。 そしてその真下の惨劇だけが、妙に生生しく肉肉しい。 彼のファゴットはどこだろう。 目当ての物はすぐに見つかった。血がつまっている。洗わなければふけなくなるだろう。 吹けなくなれば、きっと彼は悲しむ。 そう思って私は、そのファゴットを破壊した。 何を戯言を垂れているのだ、この私は。 所詮彼の手がなかろうがどうだろうが、彼の音色を聞く事など出来るわけもない。 それが死だ。 絶対的な、死。 「・・・・・・それでもアンタは」 この状況を悪くないだなんて、私に言うのですか? |