ねえ本当はね、もっと我侭言ってもよかったんだよ (匂宮本家×匂宮分家) 「ああ、うん。さよなら」 死に行く世界で、は怒った様な悲しんでいるような、本家のエリートの顔を見た。 分家の自分を何故か気に入り、毎度毎度戦闘を仕掛けてきたバトルマニアの彼女。いや、彼なのか。 「さよならってお前さ、他にいう事ないワケ」 「うん。じゃあ、そうだね、いっぱい戦ってくれて私も楽しかったよ、もう戦えないなんて哀しいね」 がん、と音がした。どうやら彼が、壁を叩いた音らしかった。 もはや夢の中のようだ。何がなにやら、分からない。 「嘘つくなよ」 「・・・・・・・・・・・・・・・」 「最期の最期に、嘘ついてんじゃねーよ」 ああ、ごめん、ね。 「アンタは戦うの、嫌いだっただろうが」 大嫌いです。殺すのも傷つけるのも、殺されるのも傷つけられるのも、嫌いです。 故に私は落ちこぼれ。故に私は分家の恥。 「何で嫌っつわないんだよ馬ー鹿」 「横暴だなあ」 「僕はいつお前が嫌だって言うか、ずっと待ってたんだ」 「天邪鬼だなあ」 きっと彼は戦う以外にコミュニケーションの方法を知らないのだろう。 そう思うと、そう言う風に育てられてきた彼を思うと、随分と哀しくなった。 だから私は、本当なら――正直に、彼に言わなければならなかったのだ。 彼も、それを望んでいたのだから。 「ねえ、ねえ出夢」 「なんだよ馬鹿」 「私は君が大好きで大好きだったから、君のいう事聴いたんだよ」 戦いへの嫌いより、君への好きのほうがずっとずっと上だったんだよ。 分家でも一人きりだった私に声を掛けてきてくれたのが、とっても嬉しかったんだよ。 だから私は君のいう事、何でも聞こうと思ったんだよ。 「二人にして何やってんだ僕ら・・・・・・泥沼じゃん」 「そ。泥沼だね」 そうだね。さよならなんていわないほうがいいね。 出夢が泣いてしまわないように。 「じゃあ、そうだね出夢」 彼の頭に手を伸ばした。 そのまま掴んで、顔を引き寄せる。 「戦いなんて大嫌いだよ何でいっつも戦わせるの、私出夢を傷つけるの嫌だよ殺そうなんて考えるだけで吐き気がするよ、本当は本当は本当の友達か何かみたいに、二人で笑って過ごせればよかったんだよ」 涙で視界が見えなくなる。嗚呼、お願い止まって涙。最期に彼の顔を刻み付けたい、 「出夢なんて大嫌いだよだって出夢と戦わせようとするんだから。出夢の事が大好きだから出夢の事なんか大嫌い」 「ごめん」 声が聞こえた。私の物ではない液体が、私の頬に零れ落ちる。 「出夢のばーか」 さよならなんて哀しいもの、私たちには似合わないから。 だから精一杯強がって、私は君を罵倒するよ、でも最初で最期だから、どうかゆるして、 |