魅せてくれて、ありがとう。 14. 夢 の 花 束 を 1 束 挙 げ る (石凪×石凪) 「来ましたよ」 石凪萌太。 それが彼の名前である。 「なんだか・・・・・・久しぶりですね」 石凪。 それが私の名前である。 苗字から推測できる通り、彼と私は親戚同士だ。 いや・・・・・・親戚同士だった、なのかも知れない。 萌太はもう随分と前に、実家から家出している。 私は友達が減って哀しかったけれど、まあ、仕方がなかった。 そして私は彼と違い、真面目に死神になる事になる。 だからこれは、本当に久しぶりの邂逅なのだった。 久しぶり、萌太。 声に出して呟いた。 「僕は元気です。妹も元気ですよ」 そう、良かった。私も元気よ。 「・・・・・・は、元気じゃなかったみたいですね」 まるでちぐはぐな回答を返す萌太。これは別に、彼が思い込みが激しくて他人のいう事を聞かない人間だというわけではなく、単に私の言葉が彼に届いていないだけなのだ。 しかし、無駄だとわかりつつも私は彼に言い返した。 元気だってば。死んでるけど。 「会いたかったです」 会えてるのになあ。いや、会えて無いのか。 萌太は私の墓の前に、夢みたいに赤い薔薇を置いた。 それは以前私が好きだといっていた花で、私は少し嬉しくなった。 ついでに墓場に赤い花を持ってくる彼の神経がおかしくて、笑った。 「僕は逃げました」 知ってるよ。手を取り合って御伽噺みたいに、妹と一緒に逃げたんでしょう。 新しい、本当の家族を探して。 私も、本当は――その家族に、入りたかったんだよ、萌太。 「は逃げなかったんですね」 逃げたよ。逃げ切れなかっただけで。逃げれなかっただけで。 「僕は――そんなが、とても愛しいと思いますよ」 そうして、私は酷く幸福な気分になった。 すると、今まで重かった身体がどんどんと軽くなって―― 自分が消えていくのを、感じた。 とん、という音さえなく、私は自分の墓石の上から彼の前に下りたった。 そうして、彼の首に腕を回す。 それを感じたのかどうなのか、彼は 「? ・・・・・・いるん、ですか」 と聞いた。私はいるよ、と答えてから、彼にキスをした。 「いるわけ・・・・・・ないですよね」 どうにもいけないなあ、と彼は呟いた。そんな夢みたいな事、ないですよねと。私は悲しくなった。 だけど同時に、仕方ないなとも思う。 それは、彼が居なくなったときと同じ感情だった。 きっと自分らはこういう運命なのだ。 だから、諦めてしまった。 萌太の顔を最後まで見て、私に焦点があっていないのを確認して。 私は緩やかに、ようやく、 |