こんなの只の自己満足だって、分かってるんだけどね。 10.いつの日かそこにもあなたの夢が (零崎×零崎+零崎) 「人識。舞織」 しばらく自室に引きこもっていたは、何日かぶりに俺達に、その笑顔を向けた。 「お願いが、あります」 目の腫れはおさまっている。どうやら割りと前から、泣くのはやめたらしかった。 手には時代錯誤気味なポラロイドカメラ。 なんとなく、予想はつく。 「なんですかー?」 「写真を撮ろう」 そして予想通りだった。 まるで兄貴みたいなことを言う――否。 兄貴の為に言っているのか。 「いいですよー」「やだよ」 声が重なった。 は舞織の方をみて微笑み、俺の方をみて顔をしかめた。 「お願い。人識」 「やだって。めんどくせえ」 女は少し考えるような仕草をした。 さあ脅しでもかける気なのか。それならそれで、どうにかしないといけなかった。 と、思っていたら。 「お願いします」 「おい」 土下座された。 普段散々慇懃無礼、人に頭なんざ下げた事もないような女が、土下座。 一体どういう反応が相応しいのか、わからない。 「お願い、します」 「・・・・・・わぁった。やりゃーいいんだろやりゃー」 結局こんな風にしかできなかった。 しかしそれに対し、は妙に神妙に、お礼を言った。 手招きをするほうへ。 よった瞬間、引き寄せられる。 「おい」 「こうしないと入んない」 身体の密着した状態で、上に構えられたカメラをみる。 「はい、ちーず」 問答無用でシャッターは切られた。 頭上でするかしゃりと言う音。 「生き残り三人組だね」 「なんか嫌な組ですよう」 だね、と言っては笑った。 それが最期だった。 * * * 「双、識」 写真を取り出して、しみじみと見つめる。 彼の弟と、妹と、私。 家族で写真を撮るのが、彼の夢だったから。 そこに彼が居ないのは、残念だけれど仕方がない。 撮ったその写真を、持って行くべきか否か迷って、結局置いていくことにした。 私が死んだ後、人識はともかく舞織辺りは身辺整理をしてくれるだろう。 その時に、見つけて。 泣いてくれればいい。 笑ってくれれば、尚いい。 怒ってくれたって構わないのだけれど。 最初で最期の家族写真。 嗚呼、愛しい君へ。 私は君の元に行きます。ただ、ただ。 「双識が現世に縛られていけるよう、未練を置いていく事にするよ」 いつの日か、見つけられるまで。 君の夢は、ここに。 |