「多分さ、あたし死なないと思うんだよ」 赤色は、突然そんなところから会話を始めた。 辺りに飛び散る自分の血は赤いが、それは目の前の赤に比べて余りにも汚い。 汚い鬼の血。 純血の赤と比べる事事態が間違いのだろう。 「死ぬとしたら、多分寿命だ。千年ぐらい生きて、そこで笑って死ぬに違いない」 「僕は、お前が死ぬ話なんか聞きたくない、哀川潤」 「あたしが死ぬ話なんざしてねえよ。黙ってろ半死人」 容赦なく一括すると高らかに笑い、思いっきりシニカルな表情を浮かべる。 「あたしは死を見つめてこそこそ生きるなんてでえっきれえなんだ! あたしは生きる! あたしが死のうとそんな事は知るか! あたしは死んでも生きるんだ!」 無茶苦茶な、破綻した言葉を紡ぐ彼女。 だが悪くない、と心の中で思った。 「だから、あたしが死んだら思いっきり歌え。鎮魂歌なんてしみったれたもん歌ったらぶん殴るからな。鎮めてんな、大いに奮わせろ! あたしが死んだらあたしの誕生を精一杯歌って祝え!」 地獄の底から響かせてみろ、と哀川潤は言う。 「ああ、そうだな。僕は千年以上待たないといけなそうだが――」 地獄の汚い赤でも見て、精々真紅に憧れるとしよう。 そう言うと、哀川潤は楽しそうな顔をしたので、自分も微笑み、緩やかに意識を飛ばしていった。 アッチェレランド・アリア |