エロ有注意! しかも蜜蟷なのに蟷蜜っぽいですよ!
















(……ようやく今日で最後か)



頭領になる前の事実上の最後の試練、拷問訓練。
今日一日乗り切って、やっと十二頭領がひとり――真庭蜜蜂を襲名できる。
昨日までの拷問も、かなりしんどい物があったが――蜜蜂は何とか乗り切っていた。
忍法の都合上、精神的な訓練は割と積んでいたのだ。

しかし気になるのが、今朝の蝙蝠の言葉。




「おう。蜜蜂じゃん。お前今日最後か?」
「あ、はい。おかげさまで」
「……そっかー」




蝙蝠は少し迷うようにしてから、蜜蜂の肩をぽんぽんっと二回叩いた。





「今日が一番きついぜ。最後まで残れた奴は結構居ても、大抵そこで失敗すんだ……きゃはきゃは、頑張れよ」
「はい」




(一体どんな拷問なんだろう……?)





分からなかった。今までだって生半可ではない拷問(それは精神的にも肉体的にも、だ)に耐えてきている。
流石に殺されはしないだろうけれど――最後を飾る拷問は一体どんなものなのだろうか。





「あ」





思わず声が上がった。音もなく開いた扉から入ってきたのは、真庭蟷螂その人だったのだ。





(ああ、成程)






なんとなく理解する。恐らくこれは、親しい者から拷問を受けて耐え切れるか否かの訓練なのだ。
それなら蝙蝠が一番きついと言ったのも理解できるし――確かに、辛いものがある。
蟷螂の表情は変わらなかった。元から感情表現の大きい方ではないが、今は完全な無表情である。





「情報は、伝えられたな」
「はい」





事前に合言葉を伝えられている。簡単な言葉で、それ故に長文よりも漏らし易いのだ。
一度油断をすれば、途中で気がつく間もなく相手に伝えてしまう。




「では――頭領の最終試験を開始する」
「はい」





現在完全に自分は拘束されている。
訓練だからと言って、少しも手を抜いてくれないのは昨日までで知れたことだった。
蟷螂から拷問を受けるのは辛いけれど――仕方ない。これが済めば晴れて一頭領だ。




蟷螂はずんずんと近くに寄ってくる。覚悟を決めるよう、つばを飲み込んだ。





「っ!?」





そして――声にならない驚きが、蜜蜂を襲う。







(か、蟷螂さん……?)







耳たぶを甘噛みされた。
思わず鳥肌が立つ。






蟷螂はそんな蜜蜂の様子に構わず、自然な手つきでしのび装束の下に手を這わせると、胸の突起に触れた。





「っあ、」





性感帯を直接触られて思わず声が漏れてしまった蜜蜂は、羞恥心から頬を染める。






(最後の拷問って……こ、これ、ですか)






年頃の青年達の間で噂になった事もある拷問方法。
蜜蜂は特にそういう話に興味が持てなかったので、詳しくはしらなかったけれど――どうやら噂は本当らしい。



蟷螂の表情は見えないが、恐らく淡々と事務的にこなしているのだろう。







(なるべくなら逆が良かった、かな……?)







自分が喘ぐ姿など、蟷螂には見せたくなかった。







「情報を教えろ」






耳元で囁かれて、また鳥肌が立つ。その間にも右手は止まっていないのだ。
それでも――何とか、言葉を返した。




「っく……嫌、で……す」
「そうか」
「ぁ、う……」






問答無用で突起を弄くられる。
吐息と共に、甘い声が漏れて――蜜蜂は再び羞恥心に耐えなければならなかった。






「!……や」






胸の辺りを弄っていた右手が、段々と下に下りてくるのが分かる。
しかし拘束された蜜蜂は、それを避ける術を持たなかった。



胸から腰へ。腰に触れられたとき、思わず身体が浮く。
そのままももを撫でられて、蜜蜂はもうぎりぎりだった。






(……押し倒したい)






だが拘束された身体ではそれも叶わない。
蟷螂の焦らすような手つきを甘受するしかないのである。






(これが所謂生殺し……?)







そんな風に悶々としていた蜜蜂だが、次の瞬間、その余裕も消えることになる。






「あ、ああっ!」






性器に直接触れられ、蜜蜂の背がそりあがった。
そんなことには考慮せず、愛撫は続く。






「ぐ……ぁ」







撫でるような動きを繰り返していた蟷螂の右手が、急に動きを変えて肉棒を握った。







「っや、だ……やめっ!」
「情報を教えれば止める」





小刻みに首を振る蜜蜂。

それだけは駄目だ。




「あ……っ」






愛撫が再開された。
意識がぼんやりとしてくる――身体が快楽に正直に反応する。
吐息が熱を帯びてきた。





(も……イきそ、う)






「っ」




寸前に愛撫が止んだ。
確かに、先程まで止めろといっていたのは自分だったけれど。






「ぅ……くっ」
「イきたいか?」
「はぁ……っん!」





ぎりぎりまで高ぶらされた身体を、イかない程度に撫でられる。
生理的な涙が零れた。思わず反射的に、頷いてしまう蜜蜂。





「やっ……だ、」
「ならどうすればいいか、分かっているな」






わかっている。
教えられた言葉を伝えればいいのだ。
しかし、それは苦痛からの開放と同時に、訓練の失敗を意味していた。






(……っかく、ここまで、来たの……に)






段々と思考が停滞してくる。
快楽に身を任せてしまいたい。その欲望が頭の中で渦巻いた。





(か……ま、きりさんと……っ同じ、ところ、に)







ようやく空いた十二頭領の一枠。
ここを逃せば次は何時になるか分からない。





蟷螂と同じところに。






その願いだけが今の蜜蜂の理性を繋いでいた。






「イきたくないのか?」






耳元で、聞き心地の良い低い声が囁く。
さながら、悪魔の囁きのようだ――或いは天使の囁きか。






もはや蜜蜂の下半身は、先走りでびっしょりだった。






答えない蜜蜂に、蟷螂は黙って立ち上がると、少し離れたところに再び座った。

蜜蜂の視界に、蟷螂の顔が入る。
それはつまり、蟷螂からもこちらが見えているという事で――






「! や……見な、っでくだ……さ」
「いやらしいな」
「っ」






快楽で忘れかけていた羞恥心が復活した。
耳まで真っ赤になる蜜蜂。蟷螂の視線がつ、と下に下りた。





「びしょぬれだ」
「言……わ、ない……で」
「いやらしい」
「っ……く」





また言われた。






「教えれば楽になるぞ」







その通り――なのだ。
どうせこれは訓練だ――教えて誰に危害が及ぶわけでもない。
機会ならまだあるだろう……よくやったじゃないか。今回は――






今回は?






そうやって、逃げる気なのか。




「教え……ま、せん」
「………………」
「僕、は――しのび、だ、か……ら」





視界はいつのまにか濁っている。それが涙の所為なのかどうかはわからなかったが、とにかくぼやけて何も見えなかった。




それでも。




落ちそうになる意識の中で、蜜蜂は妙にはっきりとした自分の声を聞いた。






「頭、領に……なるん、だから……!」
「……そうか」





足音が段々と大きく響く。






「く……ぅ……!はぁ……っ」






突然襲ってきた快楽に、一瞬何が何だか分からなくなって――





「これでも言わぬか」
「ぃあ……んっ」





次の瞬間に理解する。
衣服の上から性器を蹴り上げられて――そのまま、ぐいぐいと押さえつけられる。





「やぁ……っ」
「言わないのか」
「言……ませ、ん……っ」






と。






「あ、れ……?」






急に手足が自由になった。
頬に手が添えられて、涙が拭われる。





最初に見えたのは、優しそうに微笑む蟷螂の顔だった。





「おめでとう蜜蜂」
「……は、」
「最終訓練、終了だ」





理解が遅れる蜜蜂の耳に、流れるように言葉が入ってくる。





「本日を持って、ぬしは十二頭領が一人――虫組、真庭蜜蜂だ」
「え……あ」





ようやく思考が機能し始めた。
口元に笑みが浮かぶ。





「これ、で――」





十二頭領。
真庭忍軍を統べる十二人のかしら。


蟷螂と――同じ。



「おめでとう」
「ありが、と……、ござい、ます」







今度はちゃんとお礼の言葉を返して。
再び出てくる涙を、今度は自分で拭って。






「かま、きりさ……ん」
「なんだ、蜜蜂」
「すみません、けど……あの」





首を傾げる蟷螂に手を伸ばす。





「立たせて下さ、い」






言われて手を伸ばした蟷螂は、同じく手を伸ばしていた蜜蜂に思い切り引っ張られることになる。






「お……」






ぽす、と蜜蜂の腕の中に入ってしまった蟷螂。抗議の言葉を上げる前に、唇を塞がれる。
侵入してきた舌が口内を嘗め回し、犯して――




不覚にも蟷螂は、抵抗が出来なかった。





「ふふ」





ようやく唇を離すと、楽しそうに蜜蜂は笑った。






「いやらしい、顔……してますよ、蟷螂さん」
「っ……!」





(根にもたれてる……!?)





蜜蜂のオーラに黒いものを感じる蟷螂。




「蜜ば……」
「可愛いです」






(……もしかして理性の歯止めが利いてないのか?)







この訓練後にそうなってしまうという話は、聞いたことがある。
身体の熱がようやく収まってきたのか、蜜蜂は平静を取り戻している。






「好きです、蟷螂さん」
「な」






そこまで言うと蜜蜂は蟷螂に覆いかぶさって――そのまま、気を失った。





「……興奮、してただけか?」





口に出して聞いてみるも、答えは当然返ってこない。
自分に覆いかぶさって、幸せそうに眠る青年がいるだけである。





「……おめでとう、蜜蜂」





その頭をゆっくりと撫でながら、蟷螂は呟いた。