「相変わらずひっでーの」




最近髪の色を染め、兄を泣かせた親戚は――相変わらずの笑顔を浮かべて、俺の前に立つのだった。


容貌が幾ら変わろうと、この笑みだけは変わらないらしい。




「何がだっちゃ」
「なんっつーかよ。有様?様相?血の河に屍の山?」



残酷ーと、まるで場違いな事をいう彼。





「何が残酷だっちゃか。零崎にんなもん関係ねーっちゃ」
「それぐらいは知ってんよ。かはっ傑作だ」




一体何が可笑しいのか、笑ってみせる。





「でもよ大将」





ぐるり、とあたりを見回す仕草をした。
わざとらしく、目を見開きながら。





「なーんか荒れてね?」
「荒れてるって・・・・・・まあ、荒れてるっちゃが」
「いや、そうじゃなくて・・・・・・大将が、さ」
「・・・・・・? そんな事はねえと思うっちゃけど」





本心である。自分はいつもどおり零崎に仇なす輩を排斥しに、いつもどおり虐殺を行っただけだ。
そこに他の感情は、一切合切ない。
憎いとか、楽しいとか、そんなものがないから――自分は零崎なのだから。







「ふーん」







一転、つまらなそうに口を尖らせる人識。


こいつは何が言いたいのか。


どうせ分かるわけもないから、理解はとっくに放棄しているが。





「大将は背が高いよなーうらやましいぜ全く」
「お前もそのうち伸びるっちゃよ、たぶん」
「慰めどうも」




突然話題が変わる。
これに限っては別に珍しいことでもないので、すぐに順応できたけれど。






人識は無造作に、俺の手をとった。熱が奪われ行く、感触。






「腕ほせーし」
「言うほど細くないし、お前のが確実に細いっちゃ」
「そうじゃねえっての。だってあのイカれた釘バット、これで振り回してんのが信じらんねえよ」
「まあ・・・・・・一度持ち上げれば、後は遠心力っちゃからね」



あるいは重力だ。








人識はまた、つまらなそうにふーんと言うと、俺の手を持ち上げて、自分の口に含んだ。









「・・・・・・っ! お前何してるっちゃ!」
「舐めてんの」
「舐めてんじゃねえ!」





思わず自が出てしまうけれど、人識は手を離さない。
力が思いの他強くて、振り払えなかった。





「なあ、大将」




最後に指を甘噛して、ようやく口を離した人識は。







「忘れちまえよ」










見た事もない哀しそうな笑顔で、そういった。







君が君で、僕が僕であるということ