「お、蟷螂じゃん」
「蝙蝠か」



真庭蟷螂が、縁側に座ってのんびりとしていたところ。
上から反対向きに、蝙蝠が現れた。



「何だよーもっと驚けよ。つまんねーの」
「それはすまなかったな」
「べー」



音もなく下に降り立つと、隣に座る。
蟷螂はなんとはなしに、蝙蝠の顔を眺めていた。



「……きゃはきゃは、何凝視してんだよ」
「可愛いと思った」
「は」






蝙蝠は瞬時に蟷螂に視線を合わせると、それから慌てて俯いて、黙り込んだ。
額あての下から、赤く染まった肌が見える。




「うわ……駄目だお前」
「何か悪かったか?」
「う」




悪気があるわけではないのだった。
しかし逆に、滅茶苦茶やりずらい。




「ちくしょ……こんなのおれのキャラじゃねえっつーの」
「蝙蝠」
「なんだよ」





僅かに顔を上げたところで。
優しい感触があった。





「…………っ! あーもうお前マジ信じらんねえ!」
「ふ」
「あ! 今のわざとだったろ!」



「だが、本気だぞ」







蝙蝠は再び黙り込んだ。
そのまま手足をばたばたさせる。





「ばかやろう」
「すまない」
「ばかー」




それでも隣を離れようとしない蝙蝠を、蟷螂は微笑ましそうに見つめた。