「……少し病的だよなあ」


蝶々は呟く。
確かに目の前の鑢七実は病的なほど細かったけれど、そうじゃなく問題は自分の思考回路だった。




(こいつを見て鴛鴦を思い出すか俺は)




女だから、というそんな人類の半数に当てはまる共通項だけで、彼女を導き出してしまったらしい。
蜜蜂には偉そうな事を言ったが、彼もまた不安だった。



真庭蟷螂を殺した(と言っても蝶々はその事実を半分しか受け入れていないが)虚刀流の女。
倒せるだろうか。万一攫えなくても、殺せるだろうか。


鴛鴦にまた会えるだろうか。彼女との約束を、果たせるだろうか。



「隠れてないで、でてきてくださいな」



女の声がした。
どうやら思慮の(或いは迷いの)時間は終わりらしかった。


最後の最後に、愛しい彼女の顔を思い出してから神に願う。





どうか死んだならば、どんな形であろうと彼女に出会えるように、と。






それはしのびとしては、タブーと言っていいほど悲しい祈りだった。



「どうしてわかった?」


声を上げて姿を現した。これから先は神のみぞ知る。
だから蝶々は、笑った。


世代を変え姿を変え形を変え輪廻し転生し、それでも再び会いたい。
たぶんその度に自分は――



(どんな風に会おうと君を好きになれると断言できるのは俺にとって唯一の誇りだった)