blue 【ぶるー】 玖渚の髪を結ぶ。 今日は上のほうで二つ結び、所謂ツインテール。 結び終わっても彼女はぼくの前からどかず、首を後ろに擡げる姿は、宛ら青い兎のようだった。 いや、戯言だけどね。 「ふにー。いーちゃん、ありがと」 そう言っても玖渚はぼくから離れる気配を見せず、どころかぼくに抱きついてきた。 たぶんいつもの充電だろうと、されるがままにするぼく。 「ねえいーちゃん」 「なんだ、友」 「兎は寂しいと死んじゃうんだよ」 どく、とぼくの心臓が跳ねた。 独り言が服を着て歩くと誰に言われたのかもしれない、しかしぼくの事をぴたりと表している言葉が脳裏に浮かぶ。 どうして思考してた事と独り言がごっちゃになってるんだ? そろそろ病院に行ったほうがいいのかもしれない。行かないけど。 玖渚は、そんな僕の思考すら見透かしたように笑った。 「心配しなくても声に出してないよ。僕様ちゃんが考えただけ。いーちゃんは何考えてるかなって。その様子だと図星みたいだねー」 「……本当、お前には驚かされるよ」 「いーちゃんの事なら全部分かるよ。いえい以心伝心!」 ブイサインをこちらに向けてくる玖渚。 ぼくはその頭を軽く抱くようにする。 ぼくの事なら全部分かる。 そんな軽い言葉を考えるようにしつつ―― 果たしてぼくがこいつをどう思ってるかも、こいつには分かっているのだろうか、などと戯言。 もし――わかっているのなら。 教えて欲しい。 心の底から、冗談でも嫌味でもなく。 教えて欲しい。 「友」 「何? いーちゃん」 「好きだよ」 青い兎は騙される。 言った当人すら信じられない、愛の言葉を信じ込む。 それは何故? 寂しいと、死んでしまう、から? 人がいないと死ぬしかないから? 「僕様ちゃんもだよ」 それでも彼女は笑うから。 泣けない彼女は笑うから。 ぼくは彼女と共にいる。 |