白々と、逃避する細胞2.
また、か。 二度目になると見慣れてしまって、違和感すら起こさなくなった。 もしかしてあれが初恋だろうか、とおかしな妄想をする。 少年に? それとも――あの黒ずんだ刃物に? 「――言わずもがな――かしら」 月が出ている。 外は寒いだろう。 わかっていながら外に出た。 あの妙な格好をした忍者達を埋めた場所へと。 □ □ □ 四つの、穴を掘り返した跡があった。 その一番右端にたって、埋めたばかりでまだやわらかい土を掘り起こす。 緑色の――妙な形のしのび装束が見えた。 死体は白く。 既に腐敗が始まっているのか、そんなにおいが微かにする。 喉には、穴が開いているはずだ。 自分が、爪であけた。 その彼の爪は―ー長い。 刃物のように。 「違うわね――」 ぶつぶつと、つぶやく。 「あの人は、もっと幼かったし」 今目の前にいるのは、少年とはとてもいえない、一人の男だ。 「こんなに爪も伸びなかった」 せいぜいこれの七割ほどしか伸びていなかっただろう。それも人差し指一本だけだった。 「格好も違う」 妙なしのび装束は共通だが、こんな蟷螂をあしらったような服ではなかった。 「髪型も少し違うし」 だから違うわ、と納得する。 だから、その喉に開いた穴を確かめるように死体の首を持ち上げ―― その唇に、そう、と口付けた。 彼女にしては珍しく――恐ろしく優しく。 「ちょうだ、い」 何を? という声が聞こえる気がする。 今度は何が欲しい? 「あなた」 もう持っているだろう、ぬしは。 呆れたような声は、随分昔に聞いた声より、少し大人びている。 あの少年が大人になったらこんな風になったのかもしれない。 そう、目の前で死んでいる男を見ながら―― ――七実は、泣いた。 |