.2いかつおのてめじは

「この籠は何だ、舞織?」
「カゴですかー? カゴはですねえ、頭にかぶって、頭を守る為に使うんですよー」
「最近のスーパーは防衛にも力を入れているのか。悪くない」
「嘘ですよう!」


もしかして、スーパーに買い物って初体験なんじゃないか、この人。
見る物ある物珍しそうに、きょろきょろと当たりを見ている。
親子連れ――つまりは少女づれ――がいて、この人大丈夫だろうか、と思ったり。


ボケを天然ボケで返されると困るなあと思ってると、兄がふと口を開いた。


「悪くない」
「え? 何ですか、曲識さん?」
「僕もレンの企みに乗ってやろうと思っただけだ」


だから、と新しい兄が差し出したのは、繊細そうな手である。


「……その手は?」
「レンの企みに乗ろうと思った」


双識の企み。
自分と曲識を仲良くさせようというあれだろう。
曲識は先ほどから視線を自分から反らしており、もしかしたら照れてるのかしらん、とそんな思いつき。

情報を組み込んでみると、出てくる答えは――


「手をつなごう、って事ですか?」


軽く頷かれるので、思わず「むー」とうなってから、その手を握る。


「僕が殺しそうになったら止めてくれ。ここには少女が多すぎる」
「……自分で我慢してくださいよう。血で赤くなった大根なんか持って帰ったら皆から怒られますよ?」
「ニンジンだといえばいい」
「それ本気で言ってますか?」


よくわからない兄は、相変わらず淡々としたままだった。