「いお! よだとこういうどれこ!」
「……笑うな黙るな答えろっつーの! 訳を話せ! つーか放せ!」
「きゃはきゃは――何何だよ、喰鮫」




真庭の里の、とある家屋の一室。
そこには異様な光景が広がっていた。


十二人いる頭領のうち三人までが、縄で雁字搦めにされており。
同じく頭領の一人は、それをとても楽しそうに眺めている。



「うふふ――いいですね、いいですね、いいですね、いいですね。とてもいい眺めです」
「だからっ」
「ああ川獺。先程の話せと放せを掛けた言葉遊び、この状態で思いついたにしては中々でしたよ。言葉遊びレベ「それ以上言うな説明入れんなていうか論点そこじゃねえよ!」



「蝶々がいないと川獺のつっこみが熱くなる」
「……−リテスミ」
「横文字で喋るな元ネタが分かりづらいパロを使うな!」
「パロも横文字ですよ」
「うるさいよ!」




「まあ、川獺苛めはこの辺にして」
「何で俺明らかにこっちの陣営なのに苛められてんだ……?」




こっちの陣営。
縛られる側ということだろうか。



「なんか猥談っぽく言ってんじゃねえよ!」
「まあ理由を説明いたしましょう。流石に起きて突然これでは驚いたでしょうからね」
「流された……」
「右から来た物は左に受け流すのです」
「なんか今回パロディ多くね?」
「ろだんいなタネ」




そんな誰かの心を傷つけるような台詞を言いつつ、三人は喰鮫の言葉を待った。






「これから貴方方に内緒で、こっそりとパーティの準備をしている――というわけではなくて「ないのかよ!」

「そういや思ったんだけどさ、横文字でもパーティとか、別に戦国時代から使ってるくね?」
?だ話の男達伊の処何。なよだぎすし応反剰過もてしに、ま」
「発情期の男子みたい「思春期な!」



喰鮫は溜息を吐いた。



「話が進みませんねえ……私が説明をすると言ってから九行、私の登場から既に三十二行が通過しています」
「だから行とかっ「それ以上ツッコミを入れると菱○縛りにしますよ」





「………………」
「………………」
「………………」






黙らざるを得なかった三人。

意味のわからないお嬢さんは、絶対にお家の人に聞いてみたりしてはいけません
世の中には知っていいことと、知ると戻れないことが有ります。






「今から、大掃除をするわけです」
「あは?」
「大掃除です。去年、貴方方がふざけ回って労力を十倍にした大掃除です」
「きゃはきゃは、それで今回は邪魔するなっつーこと?」
「そうなります。言っても聞かないでしょうから、縛りました」






絶対縛ったのは趣味が半分ぐらいある気もしたが、何も言わなかった。何もいえなかった。
つっこみにならないように気をつけながら、ゆっくりと川獺が言う。






「あの、すみません、喰鮫さんもふざけてたと思うんだけど」
「ええ、ふざけましたね。楽しかったです」
「よだんいいは前おで何あゃじ」
「改心したので許していただけました」
「「「嘘だッ!」」」
「嘘です」
「認めるの早いな!」
「それも嘘です」
「この嘘吐き!」






喰鮫は、寒気のするほどにっこりと笑いながら言った。





「ええ、一回縛ったりしてみたくって」
「変態っ」「変態」「態変」
「あ、言うのを忘れていました、ちなみに私が頂いた報酬は、あなた方を縛ることというわけじゃありませんよ」
「へ?」
「『……抵抗するようなら好きすればいい。断じて邪魔させるなよ』だそうです」
「それ誰だよ言ったの!」
「鳳凰です」
「マジかよ! 何でこの変態に――」
「嘘です」
「二度ある事は三度ある!?」





「正解は蟷螂です」
「……なだんたてっ怒ぱっや」
「ああ、虫組は反応面白くって重点的にやったからな……」
「反省っ」





三人は揃って顔を上げた。





「「「したんで放してください」」」
「嫌です☆」



願・即・斬。


鬼だ。




「く、喰鮫さま……」
「おや人鳥。どうしました? 貴方も縛られますか?」
「え、えええ!?
 え、遠慮します……えと、海亀様が、早く来て手伝うようにと」
「仕方ありませんね。名残惜しいですが、この度はこれで――では」




そこまで言うと喰鮫は、縛られたままの三人を放置して、人鳥と共に外に出て行ってしまった。
離れてく足音に、安堵と憂鬱を覚える三人。






「……れこよだんすうど」
「不味いよなあ。この度っつったぜあいつ……また来る気満々じゃねえか」
「きゃはきゃは、大丈夫大丈夫」






何故か明るい蝙蝠の言葉、怪訝に思って二人が蝙蝠の方を見れば。
蝙蝠は既に、縄を抜け終わるところだった。







「!?」
「蝙蝠、お前どうやって――」
「俺は柔忍者だぜ? きゃはきゃは、間接外すぐらいわけないっつーの」






そこまで言って、白鷺の後ろに回ると、さっさと縄を外し始めた。
外からでは簡単に解けるようになっているのだろう、存外簡単な作業である。





「もーど」
「次ー」







同じ要領で川獺の縄も外すと、三人は顔を見合わせる。







「おしっ」
「たれかつ−あ」
「じゃあ、期待にお答えしまして」

邪魔しに行くか、と外に出たその時。







「ふふふふふふふふ」


「っだあぁあああ!?」






「貴方がこうするだろうことを、この私はあらかじめ予想していましたよ――」







相変わらずのパロディネタ、しかしツッコむ余裕が三人には無かった。
じりじりとにじり寄ってくる、喰鮫。








「抵抗するなら好きにしていいのですよねえ!」
「や、やばい! 蝙蝠、白鷺逃げ――ってもう逃げてるし!」
「ふふ……村などの閉鎖的な集団において、生贄というのは必要不可欠な存在である……」
「なんか嫌な考察いれないでくれる!?」





会話を交わしながらも、既に追いかけっこは始まっている。
ええ、大掃除中の里のことなど眼中になく、薙倒し蹴倒しぶち壊しながらです。




「蜜蜂――」
「蟷螂さん? どうしました」
「忍法撒菱指弾だ」
「えええええええええええええ!?」

「すまない……私の忍法爪あわせでは届かない……」
「届いたらやるつもりだったのかよ!?」
「頼めるのはぬししかいないのだが……」
「えっ……」
「蜜蜂! きゅんって顔するんじゃねえ鬱陶しい! ていうか蟷螂どの蜜蜂の扱い方なんて何処でならった!? 駄目だからな、あれでも一応仲間だからな!」
「そ、そうですよね……幾らなんでも、仲間相手に撃つわけは」
「蝶々……そっち大丈夫? こっち、折角補修したところまで壊されてるんだけど……」
「よしいけ蜜蜂。里のために死んで来い」
「鴛鴦さんのための間違いじゃないですか!? ていうか死ぬんですか僕は!」
「蜜蜂、ぬしは死にはしない」
「蟷螂さん?」
「ぬしとの思い出は、全てわたしの中にある。それがある以上、ぬしが死ぬことはない」
「……蟷螂さん……!」
「それ生物学的には死んでるわよ」