最後に会ったのはいつだったのか。
少なくとも最初に出会った日は覚えている。
ならば別段、どうでもいいだろう――何日ぶりかなんて。



妹はただ兄を迎え、
兄はただ妹に向かう。



だって零崎何だもん。
ちょっと可愛く言ってみたりして。







「おかりなさい」
「あー、ただいま」





これ、土産。
差し出した彼の手には長い切り傷があった。
彼女は慌ててそれを凝視するけれど、傷自体はもう塞がっているらしい。





「これっ」
「いや、マジであっちって物騒なのな。こっちの世界の連中でもねえのに、皆自分の為に直ぐ人殺しやがるし」
「殺さなかったんですか?」
「殺せねえんだよ」




どぅーゆーあんだーすたん、でぃどぅんちゅー。
嫌味ったらしく平仮名英語。ちなみに意訳は「わかってんだろうが――傑作だぜ、全く」です。



挨拶もそこそこに部屋に入り、夜の闇など物ともしない、明るい電気の下へと。
そこでは彼の腕の傷がはっきりと見えて、なんというか。






「……いや、ですね」
「ん? これか?」



いいじゃん、別にもう塞がってる。
しかしそう言う問題ではない。




「ならどういう問題なんだっつーの……何、傷の舐めあいでもしてくれんのかよ」
「人識君が言うと何かエロいですよう」
「エロい意味で言ったんだし」
「変態っ」
「これで変態ならお前はぜってー兄貴と一緒に住めなかったな」






かはは、と笑った人識はふと顔を上げると、舞織を凝視した。






「え。え?」
「照れんな馬鹿」






そう言ってまた笑い、舞織との距離を縮める人識。






「ちょ、ちょっと近すぎませんか――」
「いいから」








左手で肩を掴み、人識が舞織の首筋に手をやったところで




「何してるんですかっ!」




突き飛ばされました。






「…………ってえ」
「人識君の変態! お兄ちゃん! 双識さん!」
「兄貴と一緒にすんじゃねえ」





床に刷り込んだ人識は、わざとらしく溜息をついた。





「お前、首、怪我してたろ」
「へ?」






慌てて首筋を押さえ、舞織は頭を振る。







「け、怪我なんかしてませんよう」
「ほらみろ。先に言ったら意地でも隠すから見たんだっつーの」
「う」





図星だった。






「で、殺したのか?」
「……Didn't you know?」
「ん?」
「私人殺せない殺人鬼なんです――人識君と違って、戦闘能力も高くないので頑張って逃げました」
「へえ、お疲れ。でもよ」
「何ですか?」
「今の仕打ちにはお兄ちゃんちょっと怒っちゃったかなー」
「え?」







無駄に人類最速の動きだった。








「んっ」






立ち上がり瞬時に傍によって、舞織の唇を塞ぐ。
逃げるように動く頭部を軽く押さえて、口内に侵入する。
そのまま暫く口の中で下を絡ませると、抵抗の力がどんどんと抜けていくのがわかった。




「っはぁ……!」




一旦唇を開放し、しかし体から唇は離さないまま、ゆっくりと首へと滑らす。
治りかけている首筋の傷に優しくキスをすると、こそばゆかったのだろう、舞織が小さく声を上げた。
腹の周辺から洋服をたくし上げ、体に触れる。





「やっ」





そこで漸く理性が僅かに戻った舞織は首を振り、抵抗するそぶりを見せるものの体は動かない。
人識の指はゆっくりと上がっていって、下着の中に収まっている形のいい胸を優しく撫でた。




「ひとし……くんっ」
「嫌?」





顔を真っ赤に染めながら舞織が頷くと、人識は仕方ないと言う様に手を放し、足に力が入らず倒れこみそうになる舞織を抱え上げた。






「え――」
「床はきついな、確かに」
「ええっ!?」





何なんですかまるで床以外だったらいいみたいじゃないですか……!
そう言おうとするも、唇を塞がれてはどうしようもない。




「仕方ねえだろ。全然やってねえし。お前に分かるかわかんねえけど、この年の青少年に禁欲ってきついんだぜ? 今度欠陥にでも聞いてみろ」
「ひ――人識君ならその辺の女の人が幾らでも相手してくれますよ」
「お前俺がその辺の女と寝てていいのか?」
「そ、れは」




嫌ですけど……と消えそうな声で言う舞織。顔は限界まで赤くなっているようだった。






「かはは。なら決定」
「何がですか!」
「言ってほしいのか?」
「ぐ」



喋りながらも既に部屋には到着しており、人識は片足で扉を開け、中のベッドに舞織を寝かす。




「ここ、人識くんの部屋」
「何だ? お前の部屋の方が良かったってか」
「じゃ、ないですけどっ」
「大丈夫大丈夫」
「優しくするんですか?」
「俺上手いから」
「それ大丈夫じゃ……っん」






服の隙間から指をすべりこませ、行為が再開する。
奪うような口付けの間にも胸の膨らみを優しくもまれ、抵抗する力はなくなっていく一方だった。










いや、本当を言うと。
口で言うほど嫌がっていたわけでも、ないのだけれど。







「ぁ……ん」






唇を離すと僅かに銀色の糸が引いて、それを切欠に服を脱がす。







「な……っか、脱がしなれて、ません?」
「こういうのは生まれつき上手い奴と下手な奴がいるんだよ」





そこまで言うと舞織の胸に顔を埋めて突起を舐めると、怯えたように体が震えて腰が僅かに持ち上がった。







「やぁ……っ」








口の中で弄ばれ、手の方は今度はゆっくりと、下半身に下りていく。
秘部に軽く触れれば、ちゃぷ、と卑猥な音がした。
耳を塞ぎたいぐらい恥ずかしかったが、そんな余裕はない。








「えろ」
「ゃ……」
「顔が」




褒めてんだぜ、と嘯きながら、指を僅かに入れてかき混ぜた。
既に大分濡れてしまっているそこは、さほど抵抗もなく指を受け入れている。







「ぁ……っはぁ……ん」






それでも顔をしかめた舞織を安心させるように髪を撫で、首筋に顔を近づけると僅かに吸う。
小さく痛みがあって、赤い痕がついた。


必死に閉じようとする足を押さえ、入れる指の本数を増やす。
秘所の中で、てんでばらばらに動く指が触れるたび、喘ぎと共に腰が浮いた。







「そろそろか?」
「……っや……」
「大丈夫だって」








首を振った舞織に蕩ける様な微笑を見せて、人識は音をたてて指を抜いた。
そのまま自身を取り出し、舞織にあてがう。





「こわ、いっ」
「大丈夫」






信じてろって――耳元に残る低い声音。
舞織がそれに気を取られている間に、挿入は開始された。






「ぁ……っん……!」
「力抜け」




大丈夫だから、と繰り返した。
段々と時間をかけながら、しかし確実に奥へと侵入していく。





「ゃっ……あ」





二人の体の動きが重なる。
まるで踊るように交わりながら、存在を確かめ合った。







* * *











「……人識くんのばかー」
「かはは、悪かったな」
「傷のなめあい?」
「傑作だっつーの――なあ」
「何ですか?」
「もう一回「刺しますよ」